地盤改良工事とは?工法や費用からメリット・デメリットまで紹介
地盤改良のメリット・デメリットについて解説します。表層改良工法・柱状改良工法・小口径鋼管杭工法について、工法別のメリット・デメリット、費用や工期についても解説。どのようなときに地盤改良が必要となるかを知りたい方も参考にしてみてください。
家を建てるときに、「地盤改良をどうするか?」という問題で迷う方も多いかと思います。
地盤改良の費用は小さくはないため、どうしたらよいのか判断にも迷ってしまいがちです。
一見して頑丈そうに見える土地でも、調べてみたら弱い土地だったということもあり、地盤については詳しい調査が欠かせません。
見えない部分ではありますが、長く安心して大切な家で過ごすために、家を建てるうえで土地の状態を調べ、地盤を整えておくことは不可欠です。
そこで、地盤改良にはどのような工法があるか、それぞれのメリットやデメリット、費用などについて、詳しくご紹介していきます。
地盤改良の知識を身につけることで、土地の判断材料としても役立つかと思います。
地盤改良工事とは
地盤改良工事とは、弱い地盤を補強して、強い地盤に改善するための工事のことをいいます。
弱い地盤の上に家を建ててしまうと、時間が経つにつれて地盤沈下が起こったり、家が傾いたり、ドアや窓の開閉がしにくくなったりなどの弊害が起こります。また、建物の傾きによって自律神経の乱れやめまいなどの健康被害が起きてしまうこともあります。
大きな地震が発生したときなど、建物自体はそれほど壊れていなくても傾いてしまって住めなくなる場合もあります。
建物が傾いたり沈下したりすることを防ぐためにも、建てる前に地盤を調査し、必要に応じて改良工事をして地盤を強化します。
地盤改良工事のメリット・デメリット
地盤工事を行うことのメリットやデメリットを、詳しく解説します。
地盤改良工事のメリット
地盤を強化することは、家の耐久性能を上げることにもつながります。
建物をどれほど耐震性能が高くても、地盤が弱くてはその性能は発揮されません。建てる前に地盤を調べ、必要な補強を施して、地盤を強固なものにしておくことで、家の耐久性も上がり、安心して住めるようになります。
地盤を強化することは、大切な家での「安心かつ安全な暮らし」を長期間守るためにも、不可欠の条件となります。
地盤改良工事のデメリット
地盤改良を行うことで、土地を売却するときの価格が下がってしまうこともあります。地盤改良は建物に合わせて施工されるため、汎用性はあまりなく、次の建物には適用できないためです。
土地の売却時には、取り除くための費用がかかることも念頭に置いておきましょう。
また、地盤改良をするときに使用するセメント系固化材が、土との相性によっては、六価クロムを溶出させるというリスクがあります。六価クロムとは、発がん性物質でもあり土壌汚染対策法で指定された特定有害物質です。
セメントは、水と混ざると化学反応を起こして固くなる性質があります(=水和反応)。水和反応によって固まったセメントからは、六価クロムが溶け出す心配はほとんどありません。
地盤改良工事では、その土地の土とセメントを混ぜ合わせるため、土の中の有機物の種類や粘土鉱物などによって、固化不良が起きてしまうことがあります。すると、閉じ込められるはずの六価クロムが溶け出すことがあります。
法や健康被害に関わることであるため、上記の内容をしっかりと説明してくれる専門会社で相談することをおすすめします。
地盤改良工事の種類ごとの特徴とそのメリット・デメリット
地盤の状態や建てる住宅により最適な工法が変わります。
それぞれの工法の特徴と、メリット・デメリットについて理解を深め、専門会社と正しい工法を検討しましょう。
表層改良工法
まずは表層改良工法について解説します。
特徴
- 他の工法に比べコストがかからず、工期も短期間
- 小型の重機でも工事が可能
- 地中に、石やコンクリートの塊などがあっても、施行が可能
デメリット(注意点)
- 地盤を改良する面よりも地下水位(※)が高い場合は、施工不可
- 急な傾斜のある土地では、施行が難しい
- 高度な技術を要し、職人の技術によってや強度に差が出る
(※)地下水位・・・降水量や農業用水などの地下水利用などによっても変化します。
柱状改良工法
次に柱状改良工法についてです。
特徴
柱状改良工法は、戸建て住宅で一番多く採用されている工法です。
軟弱層が地表から2~8m以内の地盤に適用されます。
施工機で改良する地点に穴を開けながら、セメントミルクを注入して土と混ぜつつ固めて、地中に柱状の杭をつくります。改良する土地に杭を何本もつくり、地盤の強度を高めます。
メリット
- 地盤の強度を長年持続できる
- 支持層がない地盤でも、強度を保つことが可能
- 不同沈下(建物の重みで、建物や地盤が不揃いに沈下すること)の対策にもなる
デメリット(注意点)
- セメントが固まらず、固化不良が起こる場合がある
- 施工後に土地を元の状態に戻すのが難しい(柱が地中に残るため、土地の売却時に撤去作業の費用がかかる)
小口径鋼管杭工法
最後に、小口径鋼管杭工法について解説します。
特徴
軟弱な地盤が比較的厚い場合(地表から8~30m)、小口径鋼管杭工法を行います。
鋼管の杭を、固い地盤の支持層まで打ち込み、地盤の強度を高める工法です。
メリット
- 地盤強度が高く、重い建物でもしっかり支える
- 施工の工期が短い
- セメントを使用しない工法のため、固化不良などの心配がない
- 原状復帰しやすく、土地の価格が下がりにくい
デメリット(注意点)
- 他の工法よりも施工の費用が高くなる
- 施工中の振動や騒音がやや大きい
- 支持層がない土地では施工できない
地盤改良工事が必要となるケース
土地の状態を確認するために「地盤調査」を行い、軟弱な地盤と判明した場合は地盤改良工事が必要となります。
「地盤調査」は、もともと家が建っていた土地(建て替え)の場合も必須です。以前の建物で支障がなかったとしても、地盤が良い状態とは限らず、新たな家を建てる場所によって、地盤の強度も少しずつ変わってくるためです。
昔はどのような土地だったかを調べておくことも、ひとつの判断材料になります。土地を購入する際にも、以前の土地の状態を調べることは、地盤の状態を知る目安になります。
たとえば、もともと池や川があった、あるいは田んぼや沼地で埋め立てられた土地などは、軟弱地盤となるため、地盤を強化する必要があります。盛土がされたあとに陥没したことがある土地や、地震が発生したときに液状化したことがある土地も要注意です。
ただし、ほんの数メートル離れた場所でも地盤の強度は変わってくるため、やはり詳しい調査が不可欠となります。
地盤改良工事の費用目安と工期
家を建てるときは、必ず「地盤調査」を行います。
地盤調査にもいくつかの調査方法がありますが、一般的なSWS試験(旧スウェーデン式サウンディング試験)では、住宅の隅にあたる部分と中央部分を調査します。
敷地のどの位置に住宅を建設するか、住宅の間取りなど、最終的な設計が決まってから、地盤を調べることとなります。そのため、地盤改良に必要となる正確な費用は、設計が決まり、地盤調査が終わったあとでなければわかりません。
一般家屋の平均的な床面積、30坪あたりの平均金額と、坪単価、工期の目安をご紹介します。
30坪あたり | 坪単価 | 工期 | |
表層工法 | 30~60万円 | 1~2万円 | 約1~2日 |
柱状工法 | 50~150万円 | 4~5万円 | 約一週間 |
鋼管杭工法 | 100~200万円 | 5~7万円 | 約1~2日 |
まずは地盤に対する理解を深め適切な対応を徹底しよう
家を建てるときに、地盤の状態を調べる「地盤調査」は義務化されています。地盤の状態によって改良が必要となった場合、過剰な改良をする必要はありませんが、適切な費用をかけ最適な改良を施すことは欠かせません。
目に見えない部分ではありますが、家を建てるときには、地盤を改良するための費用がかかる前提で予算を組むことをおすすめします。
大切な家での暮らしや生活を守るためにも、地盤にもきちんと目を向け、責任をもって地盤改良を行っている業者や住宅会社を選択していただきたいと思います。
しっかりお客様の相談に乗り、疑問や不安を解決するような住宅会社を選び、安心の家づくりにつなげてください。
土地選びに迷われている方はぜひご相談ください。